朝食の後はウダウダしていたが、また10時ごろにブランチを食べた。朝食はすませているので正確にはブランチではないと思うのだが、とにかく食べるのだ。アンの作るブランチは決まって目玉焼きとベーコントマトなのだが、これがうまいのだ。ベーコンはカリカリで卵の焼き加減も最高なので、アンのところに来たときの楽しみの一つだ。ブランチを終えると、ローレンスが自分の家に戻るという。握手してよくお礼を言うと、
「今度来たときはボートで釣りに行こうな。わしも釣りをやりたくなってきたのでボートを用意しておくよ。クリスマスあたりにな。」
といってくれるではないか!なんとグレートなプランだろう。実はローレンスはボートを持っていて以前一度トローリングに連れて行ってもらったのだが、ボートの底から水漏れがしていたので、早々に引き上げた事があった。多分そのボートを修理するという事なのだろう。こっちのクリスマスは当然真夏なので、釣りの季節的にも今よりは良い。実際、夏のトローリングでは私も過去に良い釣りができた経験があるので、非常に楽しみだ。この次来るときはまたローレンスに何かお土産を持ってこなければと思いながら手を振り振り、車でボーダーコリー犬のパップを伴に帰っていくのを見送った。
パップが「ワン!
ローレンスが帰ってしまった後、しばらくまたウダウダした後、今度は昼食だ。なんか食べてばかりだが、アンが昼食用にとハンバーガーのパティを仕入れてくれていたので、私が作った。このパティはローレンスが友達の牧場からもらってくる正真正銘の産直なので非常にうまいのだ。このパティをバターでたまねぎと一緒に焼くと、脂っこさはこの上ないが、この上なくうまい。このハンバーガーだけは日本食よりもうまい。分厚くて、グランマックのさらに2倍ほどの肉厚である。
ハンバーガーのランチを食べながらアンと何故か政治の話になった。アンはウィンストン・ピータースという政治家のファンで、この前の選挙では彼の政党のビラをロトルアじゅうにくばるという事までやったほど熱心だったのだ。結局、彼は選挙区(ロトルアではなく、タウランガだが)では落選し、比例で国会には残ったものの、政党的には惨敗でアンはとても失望してしまい、大量のビラ配りの疲れが一挙に出てしまったようだった。私が来る前までは本当に疲れきっていたらしい。なので私も選挙の話しは避けていたのだが。。。
ウィンストン・ピータースは政府の移民政策に対する批判の急先鋒であり、私的には現時点では賛成できない政策の持ち主だ。もっとも彼の主張はとても正しいのだが、現行の移民制度に乗っかっている私としては、そんなにころころ制度が変わってしまうと困るのである。落ち着くまでは当分現行政策が続いてくれないと困るのだ。
ちなみに、こういう固い話しだと私も結構しゃべれるのである。ローレンスの英語に代表される、カジュアルな英語というのはとても難しく、一方、政治の話しとか固い話になると結構理解できるし、しゃべれるのである。要するにボキャブラリーや言い回しが固いのである。生活の中で耳で覚えた英語でなく、机の上でしかも試験対策用の英単語本で単語を覚えたからであろう。実際に移住してからは英語でラジオやテレビが聞き放題(当たり前だが)なので、単語帳で単語を覚えるというよりは、そちらを主にやっている。英語で日記を書いたりもしている。徐々にではあるが何も考えずに口に上ってくる言葉というのも段々増えてきた。
そうこうしているうちに、バスの時間がせまって来、アンがバス停まで車で連れて行ってくれた。車の中で、もう一度よくお礼を言った。こんなにしてもらってお礼のしようがない、いつかロトルアに家を買って住める様になったときには、アンももう車を運転できないだろうから、ボクが運転手をしてどこにでも連れて行ってあげる、などと、とんでもなく遠い未来、しかも実現可能性がかなり不透明な事でも何でも言って、なんとか感謝の気持ちを伝えようとした。アンは笑っていたが「車を運転できないだろうから」というくだりでは少し、不安そうな寂しそうな表情をしていた。私は余計な事を言ってしまったかと少し後悔した。
バス停に着くと既に大半の人が乗車していた。ハグをしてバスに乗り込み席に座るとアンが下で私を探してバスの前から後ろを行ったり来たりしている。私は中から合図を送っているのだがなかなか気づいてくれない。だがそのうちやっと気づいてくれてもう一度手を振り合った。そしてバスが出た。
バスが出発する直前、2人組の子供が乗り込んできていた。私の席のとなりに座って、「席を替わって」と言ってくる。私が窓際に座っていたからだ。さくっと断ると子供はあっさりしたもので、気を悪くした風も無くなんだかんだ話しかけてくる。
「ガムは好き?」とか「これ何か知ってる?」とか。
話してみると彼らはハミルトンに住んでいて、ロトルアにはハカ(ラグビーなどでオールブラックスが踊る戦いの踊り)を習いに来ていたのだという。「これ何か知ってる?」という「これ」とは、そのハカで使う槍みたいな棒だったのだ。90センチくらいの棒で、先端には赤いビニールテープで留めた白い羽根がついていた。自分で作ったんだというので
「よく出来てるね」と言うと「欲しい?」と言ってくる。
「いや要らない」というのも何なので、「だって、それは練習用なんでしょ?持ってなきゃ駄目だよ」というと、それでも、練習はもう終了したので良いのだ、欲しいか?と言ってくる。ウーム困った
そんなこんなで彼らの下車地ハミルトンに着いた。ハミルトンでは運転手も休憩するので盗難防止のためバスを閉めるため、全員がバスをおりなければならず、降りてタバコをすっていると、ポンと肩をたたく人がいる。振り返ると、さっきのマオリの子だった。彼は11歳なのだが、そんな子供に肩をポンとされる俺って・・・とちょっと思ったが、「よう」というと、日本人の方の子が
「ダラー」
という。「は?」と聞きなおすと、どうも小遣いに1ドルくれと言うのだ。2人で2ドルだったらあげても良かったのだが、教育上良くないと思うことにして「ノー」と冷たく断った
「16だからタバコ買えないの。1本チョーダイ」
という感じだ。移住してきた当初は戸惑ったが、最近はさくっと断るのにもなれていたので、今回もさくっと断った。すると、マオリの子が何かごにょごにょと言いながらも、にこっと笑って「see ya」と言って2人で去って行った。
子供達が去ってしまった後は退屈なバスの旅になり、やっぱり小遣いくらいあげとけば良かったかななどと考えていると、あっけなくオークランドに着いて、旅は終わりを告げた。
クリスマスホリデー(約2週間の休み)にはまたアンがまた来いと言ってくれているので、行こうと思う。何か良いお土産を持って。そうそう、その頃までにはオークランドでナマズを釣って置かなければ。
(ロトルア旅行:完)





