「すー、すー
「・・・・。」
このまま道を間違えても何だし、思い切って「これはどっちに曲がれば良いのですか?
「右!
私は吹き出しそうになるのを必死でこらえ、右に曲がった。それからは試験官は再び寝入ることなく、無事にAAに帰りついた。着いてみると予定時間の45分を20分くらい超過していて、1時間とちょっとが経っていた。やはり、第三段階のワインディングの高速走行とその後の試験官の「お昼寝」の分、無駄に走り回って時間を食ってしまったらしい。
出発点のAAまで帰り着いて駐車場に無事車を停めるや否や、試験官は無言のまま、何かの紙を書きだし、差し出した。やっと口を開いて「合格。これは仮の免許証だ。実際の免許は1ヶ月以内に送られてくるから、それまではこの紙を運転の際、携行しておくように
無事に合格して、るんるん気分でレンタカーを返しにレンタカー屋まで帰ってきた。約束の時間まで少し早かったのでガソリンももったいないので近くに車を停めて待つ事にした。そして時間が来てから、一応電話をして、オフィスにいるかどうか確認してみた。朝の時点では「昼間は出ているけど、その頃には必ず帰っていますから」との事だったのだが、きっとまたどうせ遅れてるかもしれないと思ったからだ。電話してみると、電話の向こうでは、いかにも今運転中という感じで、「ごめんなさい、あと30分くらいかかりそうなの、もう少し待っててください」との事で、さらに待たされた
何でも、日本から新婚旅行でやってきたお客をシティのホテルまで迎えにいってピックアップし、レンタカー屋のオフィスまで向かう途中で、カップルが結婚式で贈られたプレゼントか何かを無くした事に気が付き、ホテルまで戻りたいと言い出したのだそうな
レンタカー屋の語ったことが本当かどうかは知らないが、本当だとしたら、その中国人レンタカー屋は随分と親切なのか、はたまた日本人カップルが随分と身勝手なのか、どっちだろうと思った。レンタカー屋の話をそのまま信じると、その日本人新婚カップルは、レンタカー屋に予約し、ホテルまで迎えに来てもらってピックアップしてもらい、つまり実働させておいて、自分たちの都合で振り回したうえ、キャンセル料も払わなかったという事になる。
私はちょっと興味を覚えたし、車中暇なので会話を続ける意味でも、そういう場合キャンセル料は要求しないのかと聞いて見た。するとレンタカー屋のおばさんは「もちろん普通は貰いますけど、新婚旅行でわざわざ来たのだし、大事なものを失くしてしまった様なのが気の毒だったので、払えとは言いませんでした」との事だった。その話が全て本当だとしたら、日本人のカップルは、旅先で親切なレンタカー屋にめぐりあえて良い思い出になった事だろうと思ったものだった。彼らが、他人から親切を受けたとき、きちんと親切を受けた事を自覚できる日本人であった事を願いつつ。
しつこく「本当だとしたら」というと、猜疑心の強い奴だと思うかもしれない。だが実際、可能性としては色々と考えられたのだ。例えば、極端な話、見知らぬ異国に来てレンタカーを頼んだら流暢に日本語をしゃべる謎の中国人が現れ、車に乗れという。オフィスは離れたところにあるんだ、そこで車を引き渡そうじゃないか、と言われた新婚ホヤホヤの新郎は、そこに何か疑惑と身の危険を察知した。そこで彼はかわいい新妻を守るため、急ごしらえのウソを言って、難を逃れようとしたのかも知れない。あるいは、レンタカー屋の単なる言い訳の作り話あるいは実話をアレンジしたものであり、行きも帰りも遅れた事に対し引け目を感じたおばさんが、私の気をすこしでも和らげようとした作為的ないい話だったのかもしれない。
だが、レンタカー屋のおばさんはやはり本当の事を言っていたのだと思いたいし、そう信じる事にした。そして、このレンタカー屋の旦那はともかく、この奥さんの方は、やはりとても良い人なんだ、と思った。そう考えると、あの怪しげな旦那のおかげでトーンダウンしていた気持ちもまたまた盛り返してきて、また機会があったらお願いしてみようと思う事にした。
こうやって、回想しながら書いていると、免許一つ取るのにも、色々なふれあい、特に何故か今回、中国人とのふれあいが多い事に気がついた。特に大きかったのは、問題集を貸してくれたり、実技試験をコーチしてくれたりしてくれた中国人と友人になれた事だった。彼とはその後も良き友人としておつきあいさせていただいている。
当たり前であるが、ニュージーランドでは移民はやはり移民であり、よそ者である。そして、しばしば「ランク」「クラス」が下だと見なされる。ひどい時には「クソアジア人め
数日後、「1ヶ月以内」と言っていた免許証は、予想外に素早く3日で届いた。ニュージーランドクオリティは単にいつも「遅い・いい加減」というだけではなく、このように「ムラ」のある事も、その特徴の一つである。
(ニュージーランドの免許事情:完)
(ニュージーランドの車生活につづく)





