中国人の友人は、一通りコースを案内してくれた後、「運転してみるアルか?」

と、これまた親切なオファー!内心、少し期待していた私は、いちもにもなく、ありがとう、させていただきます、と言って、運転を代わらせてもらった。運転歴15年以上の私の運転を見て、彼は「
ベリーグッド!」と言ってくれた。だが、以前書いたギブ・ウェイ・ルールが、やはり戸惑った。学科でルールを頭に入れていたとはいえ、実際に運転してみると、どうしても左折時の右折車のチェックがぞんざいになってしまう

。彼はそれをしっかりチェックしてくれていて、私がチェックを忘れるたびに「
右折車のチェック!」と指摘してくれた。本当に教官の様であり、そんな彼に案内してもらった私はなんと幸運だったことだろうか!
右折車優先と同様、日本人が戸惑うものとしてあげられる「
ラン・アバウト」という交差点がある。信号機が日本ほど普及していないニュージーランドでは、ラン・アバウトという
ロータリー式の交差点が多く、これを作法どおり安全にパスできるかどうかも実技試験の時の大きなポイントとの事だった。これも右方優先のルールにしたがい、ロータリーへの侵入時、右から車が来ていたら、それを優先させるというのが、その作法である。実技試験では、作法どおりに出来る事に加えて、その時に交差点がどういう状況だったか、それに応じて自分は何をしたか、を記憶しておき、それを交差点通過後、車を左に寄せて停めた上で、試験官に「正確に」説明しなければならないのだ。例えば、「車が右から来ていたので、譲りました」と言うだけではダメで、「その車はどんな車で何色だったか?」と突っ込まれるのだ!また、どんな
ハザード(要注意だった点)があったかも聞かれるらしい。例えば「犬を連れた太った女性が歩道を歩いていたが道路に出てくる気配はなかった」とか「通学帰りの子供が3人連れ立って歩いていたがこっちに向かっていたので道路に飛び出してくる様には見えなかった」などである。私はそれを聞いて「げ

、そんなこといちいち一瞬で憶えてられるかなぁ?しかも方向指示器を出すタイミングとか目視とかの基本的な運転動作に気をとられてるのに」などと大いに不安になったものだ。なので、この練習は30分ほど繰り返し繰り返しさせてもらった。それでも少々不安は残ったが、経験させてもらっただけで充分ありがたかったし、後は試験当日の朝に自分で練習しようと思った。練習すべき点がとてもクリアになり、彼(中国人の友人)には本当に感謝しなければならない。
練習を終え、感謝のしるしに食事でも、と思い、彼を誘って見たが、家に帰らなければ奥さんに
叱られるとの事で自分の住むホーウィックから、私の自宅まで送ってくれ、さらにトンボ返りでまたホーウィックまで帰っていった。
そして試験当日。レンタカー屋は
ニュージークオリティそのもので、予想はしていたが、時間に遅れてやってきた。試験は午後3時からでレンタカーは朝一番から借りていたので、時間に余裕はあったが、もしぎりぎりだったら危ないところである。おまけに迎えに来た車は1台しかなく、後部座席には子供が座っている。どう考えても、すんなり車を貸してくれる状況には思えないぞと思っていると、案の定、
「ごめんなさい、本当は旦那がもう一台の車で追従してくるはずだったんだけど、手違いがあって、こういう形になってしまったの。子供を学校まで送ってから、事務所に行って、そこで車を貸したいんだけど良いですか?」
などと言う。まあしょうがないので「もちろん!」と言ってにこやかに車に乗り込んだ。子供に「ハロー」と言ったが、無視された・・・。
車が走り出して数分も経たないうちにレンタカー屋のおばさんのケータイが鳴り、なにやら中国語で話しだした。すると、そのうち段々、何か
口調が荒々しくなってきて、しまいには
怒鳴りまくりだした

。中国人の女性は非常に気が強く激しいというのは聞いていたが、間近で怒り狂う様を初めて見た私は恐怖に慄いた

。中国人男性と女性の話になると必ず言われるのが「次に生まれ変わったら日本人に生まれたいアルヨ。なぜかって?女性が優しいからアルね!」

ということだ。日本の女性は、おしとやかで、優しく、従順なんだという固定観念があるらしいのだ。私はその度に「それは違うよ!そんな事は今の日本ではまったく本当じゃない。もちろん、ごく稀に古風な女性はいるけど、今は普通、女性の方が強いよ」と言う事にしている(笑)。だが、このレンタカー屋のおばさんが
猛り狂う様を間近で見てみると、やはりそれは中国人男性が言う事の方が正しいというのがよくわかった(笑)。これから比べればやはり日本女性はおしとやかで優しい。日本人に生まれて本当に良かったと胸をなでおろしたものだ

。話はそれたが、電話を切ったレンタカー屋のおばさんは、
「ごめんなさい、今のは旦那で、今やっと家に帰ってきたみたいなの。
夜通し遊んでたみたいで・・・。それで、私頭にきちゃって・・・。こっちが一日の仕事のタイムスケジュールを考えてやってるのに、本当に
良い加減な旦那で頭にきちゃって・・・」
とまだ興奮さめやらず言い募る。固まっていた私

は、「いや、ナニその、ボクに関しては気にしてないし、試験も昼からだから、時間も全然余裕あるし、気にしないで」というのがやっとだった。彼らもアジア移民だ。奥さんが日本語を流暢に話すこともあるのだろう、中国人はもちろん、アジア人向けのレンタカー屋を夫婦で営んでいるのだろう。喧嘩をしながらも、移住先の国でそんな風に力強く夫婦でビジネスをやっているのを見ると、少しうらやましいと思うとともに、特に奥さんが真面目に頑張って、たくましく生きる姿に勇気付けられた。
応援したい気持ちまで出てきて、今度また機会があったら、ここを使おうと思ったのであった。
レンタカー屋の家(兼オフィス)に着くと、
問題の旦那が出てきて、何かボソボソ言っている。彼は日本語が話せないようで、私に話しかけるときは英語だった。奥さんは彼の顔を見るとまた怒りがぶり返したのだろう、ひとしきり例の調子で怒り狂い

始めた。私は今度はもう慣れていたので「早く手続きしてくれないかなー」などと思っていると10分ほどたっただろうか(実際にはもっと短かったかも知れないが、それくらい長く感じた)、やっと手続きが始まり、書類にサインして、
さあ車だ!と言う事で車を見せてもらった。車はかなり古い角型日産ブルーバード。「免許の試験を受けるとの事だから、整備はばっちりしといたアルね!」

と旦那。おお、ちゃんと憶えていてくれたのね、と嬉しく思い、そうは言っても問題があるといけないので
チェックしてみた。すると、テールのブレーキランプが片側ついてない!これじゃ試験は落とされてしまうので困る、というと、旦那は「うーん、昨日ちゃんとチェックしたんだけどナー・・・などとブツクサ言いながらトランクを開けてごそごそテールランプをいじりだした。私はそんな彼につきあってる暇はないと思い、彼は見捨てて、奥さんの方に代わりの車はないのかと聞いて見た。すると奥さんは「そうね、じゃあ、あの車で良かったら」とさっきまで乗っていた車の方を貸してくれることになった。日産パルサーで、さっきのブルーバードよりは格段に新しい

。多分、自分たちが使っている車なのだろう。チェックしてみると、こちらは問題なしだった。
車はそれでOKだったが、ついさっきまではこのレンタカー屋を応援したい気持ちまであったのが、奥さんには悪いが、この一件で急激にクールダウンした

。もし私が自分でチェックしていなかったら、
運転実技の前の事前チェックの段階で落とされていた事だろう。そうすると、レンタカー代100ドルが全くの無意味になるばかりでなく、再試験でまた80ウン、ドルかかるし、さらにはまたレンタカーを100ドルくらいで借りる事になったであろう。あぶないあぶない。個人的にはアジア人の方がピュアなKiwiたちよりははるかにマシだと思うのだが、それでもやはり、ニュージークオリティはニュージークオリティだ。気をつけていなければならない。大体、あの旦那はなにか
怪しい
。実技の試験についても「ホーウィックは60キロ道路だから60キロで走らないとダメだよ」などとガセを言ってたし(実際にそのような道路もあるのかも知れないが、下見したコースは第三段階の高速走行テストのコース以外、全て50キロ道路である事を私は既に確認済みであった)。もし私が人の良いウッカリ者だったら、(50キロ道路を)彼の言うとおり60キロで疾走して、
即効で試験を落としていたことだろう。このガセネタをつかませようとした事といい、テールランプの件といい、そもそも彼のせいで車を借りるのが遅くなってしまったことと言い、どれも一つ間違えば即試験を落とすという事に直結していたであろう事に気づき、「このおっさん、オレになんか恨みでもあんのか?」と思ったのであった。
まあしょうがない、なにはともあれ気分を入れ替えてさあ、練習だ、と言う事でホーウィックに向かった

。
(
つづく)
ニュージーランドは色んなモノもそうですけど、特にサービスの質に対する価格が何でもド高く感じます。コストパフォーマンスが低すぎです(笑)この点は本当、先進国日本の温室で育ってきた私にとってはホントやってられません(笑)日本でクレーマーとか言われてる人がニュージーランドにやってきたら、すごい事になりそうですよね(笑)私自身はやっと段々「そんなもんか」というあきらめというか適応してきた気はしますけど(笑)まあ今までの日本が凄すぎただけなんでしょうね。でも日本のサービスの質もコールセンターなんかのはびこりと同期して、急激に下がってますよね。それぞれ理由は全然ちがうだろうに、落ち着きどころは同じ方向に走っている様に見えるのが興味深いです(笑)日本は効率追求のあまり心を失いつつあり、一方、ニュージーランドはゆとりとか親密感を追求(というかそれが当然で第一義と見える)するがあまり、効率が悪い(笑)