移住後数ヶ月が経ったある日、いつまでも日本で取ってきた国際免許だけじゃ色々と不便なので、ニュージーランドの
運転免許を取得する事を決心し、
AA(日本で言うJAFみたいなところだが、免許は警察じゃなくて、この機関が仕切っている)に行き、学科試験を申し込んできた。ここニュージーランドでは、運転免許はかなり若い年齢から取れる(確か13歳だか15歳だか)のだが、観察期間みたいなのが長くてゼロからとると結構大変な様である。だが日本の免許があれば
変換モードでショートカットできるのだ。それでも学科と実技は受けなければいけない。語学学校で知り合った移住の先輩中国人に学科について聞いたら「チョー簡単アルネ。問題集の問題と同じのが出るからそれを憶えるだけでOKアルヨ。問題集明日持ってきてあげるアルネ」

との事だった。おお、なんと親切な!

と思ったが、サクッと忘れられそうな予感がしないでもない・・・。まあその時は20何ドルかで問題集買うしかないかと思ってとりあえず申込をしに行ったのだった。
申込をすると、その場でまず
視力検査をされる。日本の免許センターにもある、あの覗き込む機械だ。覗いてみるとなんだか文字が並んでいる。で、左上から
「
上、下・・・」

などと読んでいくと担当のにーちゃんが
「
違う違う!文字を
そのまま読むんだよ!上とか下とかじゃないよ!
ったく」

などと言う。ヤな感じだ。だが、うーん、確かに

そういえばこっちの目の検査は日本のと違うって何かで読んだな、と思ったが、たまたま最初の文字が丸型が連続していたのもあり、すっかり勘違いしてみっともないことこの上なし。再度覗いてみたが、すごく見にくくて「○○・・・」と全部同じにしか見えない。で、テキトーに言ってると、
「君、本当に見えてる?
単に憶測で言って無いかい?全然違ってるよ!」

と来たもんだ。図星をつかれてハイ確かに見えてないのでテキトーに言ってました

とは言えないが本当に見にくかったので「なんかレンズが脂ぎってて見にくいでつ」というとティッシュをくれたのでレンズを拭いてみて再度チャレンジ。今度はさっきよりもマシだがそれでもやっぱり見えにくい。うーん、こりゃ本格的に目が悪くなってしまってるぞと思いながらも何とかクリア。面倒くさいのか、ある程度合ってたら大目に見てくれたみたいだ。ニュージーランドらしい(笑)。
その後、最近になってテレビでこの検査マシンについて議論が巻き起こっているというニュースを見た。まったく目に問題のない人がこのマシンの検査で落とされるというケースが増えているらしい。もちろん関係者はマシンの正当性を主張し、それはグローバルスタンダードなマシンなんだとしていたが、実際にショックなほど見にくかった事を実体験している私は「ははぁ」と思ったものだ。おそらくマシン自体がグローバルスタンダードでもそれを運用する側がグローバルスタンダードじゃなくて、ニュージークオリティなのだと。つまり手抜きなどで機器の調整を怠っていたり、レンズの手入れを怠ったりしているのが本当のところじゃないかと思ったものだ。何はともあれ、申込を終えたのであとは試験に備えるだけだ。問題集が入手できればちょうどその週末は3連休だったので、充分時間はあった。学科試験は200問ちょいの市販の問題集(
ROAD CODE)から抜粋された問題が38問出されるだけで、問題自体は問題集に載っているのとまったく同じらしい。なので数回
問題集を見直すだけで充分
パスできるとの事。Pull overとか、dip the headlightsなどの言い回しに最初は「は?」という感じであったが、一通り問題集を終える頃には、それらの意味も理解できた。第一ルール自体日本と似ている。だが勿論、いくつか大きく違う点がある。
なかでも日本人が一番戸惑うと言われるのが
ギブ・ウェイ・ルールという奴だ。日本と同じで左側通行なのに、あえて右方を優先するというところから「
譲り合い」の精神が、より強く現れており、それでギブ・ウェイ・ルールと呼ばれるのだそうだ。だが、この制度も最近は
見直しの議論が盛んになっている。交通量が増えてくると、やはり、時に「譲り合い」の精神は合理性に矛盾し、ギクシャクしてしまうのだ。例えば交差点で左折しようとしたとき、前方で右折してこようとしている車がいるとする。ニュージーランドでは、この様な場合、自分の後ろから直進車が来ていなければ、右折車を優先させなければならない。だが、これを実践するためには、
右前方を見て右折車の有無を確認、そして、
自分の後方から直進車が来ていない事、さらには、
巻き込まないように左後方の死角のチェックと、一瞬の間にまことに忙しい。おまけにウインカーを出さない後続車も多いため、非常に話はややこしい。幸い日本ほどバイクが多くなく、左折時の巻き込み事故の確率は低いので、ついつい左後方のチェックがなおざりになってしまうため、ヒヤヒヤ

ものである。そして、実際に、そのように忙しい事をしなければいけからだろう、タイミングがずれたりして、事故が急増しているのだろう。それで、見直し議論が巻き起こっているのである。
それはそれとして、なにしろ目先の学科試験に受からなければ先に進まない。そして、学科試験の日がやってきた。それは拍子抜けするほど簡単だった。5分くらいで回答終了・全問正解

担当は、またあの目の検査の時のヤな感じのにーちゃんだったが、今回は「Excellent!」と言ってくれた。
さて、学科を合格するとお次は路上の
実技を予約しなければいけない。路上の実技試験は自分で場所を指定できる。だが場所によって難しいところと簡単なところがあるらしく、実際
シティに近いところは難しいらしい
。交通量が多くハザードが多いからそれはそうだろう。じゃあシティの近く以外だと実際にどこが簡単かというと、これについては人によって言う事もまばらなので、私は例の中国人の友人が受けた所と同じ(ホーウィック)にする事にした。実技試験の予約は大体1週間先あたりからとれるらしいので、ホーウィックが取れるなるべく早い日でお願いして、そのとおり取れた。車は自分で持ち込まなければいけないので、レンタカーを借りなければいけなかったし、コースの下見もできればしておきたかった。
とりあえず試験まで1週間しかないので、まずは「運転免許の実技に使うので、
きっちり整備されている車で頼む」と、レンタカーを押さえた。そして、中国人の友人にどのあたりを走るのかを聞いて見た。彼は最初地図で説明してくれていたが「今度の日曜日暇アルか?暇だったら、僕の車でコースを案内してあげるアルよ」

との親切なオファー!勿論、お願いすることにした。日曜日、彼は自分の車で私の家まで迎えに来てくれ、その後また彼が住み、また、試験のコースでもあるホーウィックにトンボ返りしたうえで、自分が走ったコースを案内してくれた。彼は、一度親切にしようと決心したら徹底的に親切にしてくれるという、そんな中国人の
美点を体現している様な人であった。自分の走ったコースだけでなく、彼の奥さんが受けた時には違うコースだったらしいので、そっちのコースも案内してくれた。私はそんな彼に感謝しつつ「それにしても、よく憶えてるもんだな〜」と感心してしまった。ちょくちょく後輩移民を指導しているのかも知れない。中国人社会はこういう点で横のつながりが強いので、そういう事もありうるなあと思い、さすがと思ったりもしたものだ。私には2年も経ってコースを憶えているなんて出来ない芸当であり、実際半年くらいしか経っていない今ですら細かくは憶えていない

。
彼は各ポイントでの注意点とかアドバイスもしてくれ、それらがことごとく適確なのでまたまた感心して「凄いっすね!試験官になれば良いのでは?」

と言うと、「イヤ英語がね・・・」

と急に暗くなって言う。一般技能移民で移住してきて2年経つ彼でもまだまだ英語には自信がなく、またおそらく、その事を一家の主として普段から気にしていたのであろうか。私は同じ悩みを持つ人間として少々デリカシーに欠けた事を言ってしまった事をすまなく思った

。彼は私と同じ様な年齢であるため、トシをくってからの英語習得の難しさという意味で私は彼のそんな鬱屈感に共感し、やはりこの壁を乗り越えるのは中々大変そうだな、
同じアジア移民としてお互い頑張ろうな、と心の中でつぶやいた。
(
つづく)
そうそう「Pull overって何だ〜」って僕も思いましたよ。ちなみに僕は実技のPart2でのハザードの指摘の時、1人も、1台も、1匹も動いているものが無く、ひたすら「何も無い」と答えた覚えがあります。
本当、歳をくってからの英語習得って厳しいですよね・・IELTSのスコアって何なんだろう?といつも実生活の中で思い、ヘコンデます。
持論なのですが、多分、今まで日本で培った「大人脳」(抽象的な考え方とか敬語等の難解な言い回し等)が「英語脳」をじゃまする(追いつかない)のではないかと思うんですよね〜。
それはそうと、ハザードで何もなかったとの事、それは超ラッキーですね!その試験コースがどこだったかというのは結構貴重な情報だと思います!(^^)